静岡地方裁判所 昭和62年(行ウ)8号 判決 1995年11月10日
原告
甲野太郎(仮名)(X1)
同
乙野次郎(仮名)(X2)
右両名訴訟代理人弁護士
大橋昭夫
同
小川秀世
同
伊藤みさ子
同
冨山喜久雄
被告
静岡県静岡財務事務所長(Y) 島田博昭
右訴訟代理人弁護士
牧田静二
右訴訟復代理人弁護士
洞江秀
同
石割誠
右指定代理人
大嶽文彦
同
小倉擴
同
森島周一
同
白鳥英夫
主文
一 被告が原告らに対し、昭和六二年三月二〇日付でした静岡市〔中略〕甲野ビル所在の飲食店「A」に係る昭和五六年四月分ないし昭和五七年六月分、同年八月分ないし昭和五八年六月分、同年六月分ないし同年一二月分の各料理飲食等消費税の更正のうち、その税額が別紙認定額一覧表の当該月分に係る税額欄記載の額を超える部分、並びに昭和五八年一一月分及び同年一二月分の各重加算金徴収決定のうち、その重加算金額が同表の当該月分に係る重加算金欄記載の額を超える部分を取り消す。
二 被告が原告らに対し、昭和六二年三月二〇日付でした前項の飲食店に係る昭和五九年三月分ないし同年六月分、同年八月分ないし同年一二月分、昭和六一年一月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一一月分及び同年一二月分の各料理飲食等消費税の決定のうち、その税額が別紙認定額一覧表の当該月分に係る税額欄記載の額を超える部分、並びに昭和五九年四月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一〇月分、同年一二月分、昭和六一年一月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一一月分及び同年一二月分の各重加算金徴収決定のうち、その重加算金額が同表の当該月分に係る重加算金欄記載の額を超える部分を取り消す。
三 原告らのその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告の、その余を原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
被告が原告らに対し、昭和六二年三月二〇日付でした静岡市〔中略〕甲野ビル所在の飲食店「A」に係る昭和五六年四月分ないし昭和五八年一二月分の各料理飲食等消費税の更正のうち、その税額が別表第一の納入申告等税額欄記載の金額を超える部分並びに昭和五八年一一月分及び同年一二月分の各重加算金徴収決定、並びに昭和五九年一月分ないし昭和六一年八月分、同年一一月分及び同年一二月分の各料理飲食等消費税の決定及び重加算金徴収決定をいずれも取り消す。
第二 事案の概要
一 争いのない事実等
1 当事者
(一) 原告乙野次郎(以下「原告乙野」という。)は、昭和五五年一〇月六日から静岡市〔中略〕甲野ビルにおいて「A」との名称で飲食店(ディスコティック)を経営し(以下、右店舗を「A」という。)、Aに係る料理飲食等消費税(以下「料飲税」という。)の特別徴収義務者として指定されていたものである。
(争いがない。)
(二) 原告甲野太郎(以下「原告甲野」という。)は、被告によってAに係る料飲税の連帯納税義務者とされ、原告乙野とともに後記本件課税処分を受けたものである。
(争いがない。)
(三) 被告は、静岡県知事から、料飲税の賦課徴収に関する同知事の権限の委任を受けたものである。
(争いがない。)
2 本件課税処分の経緯
(一) 原告乙野は、Aに係る昭和五六年四月分ないし昭和五八年一二月分の料飲税につき、いずれも申告納入期限経過後に、その課税標準額及び税額を別表第一の納入申告等欄記載のとおり(昭和五八年五月分ないし同年一〇月分については別表第二の納入申告欄記載のとおり)とする納入申告をしたが、昭和五九年一月分ないし昭和六一年八月分、同年一一月分及び同年一二月分の各料飲税については、納入申告をしなかった。
(各納入申告に係る課税標準額につき〔証拠略〕。その余の事実は争いがない。)
(二) 被告は、昭和五九年七月一四日付で、原告乙野に対しAに係る昭和五八年五月分ないし同年一〇月分の各料飲税につき、課税標準額及び税額を別表第二の更正欄記載のとおりとする更正(以下「第一次更正」という。)並びに同表の不申告加算金欄記載のとおりの不申告加算金徴収決定をした。
(第一次更正に係る課税標準額につき〔証拠略〕。その余の事実は争いがない。)
(三) 被告は、さらに昭和六二年三月二〇日付で、原告らを連帯納税義務者として、Aに係る昭和五六年四月分ないし昭和五八年一二月分料飲税につき、課税標準額及び税額を別表第一の更正・決定欄記載のとおりとする更正並びに昭和五八年一一月分及び同年一二月分につき同表の重加算金欄記載のとおりの重加算金徴収決定をし、また、昭和五九年一月分ないし昭和六一年八月分、同年一一月分及び同年一二月分料飲税につき、課税標準額及び税額を同表の更正・決定欄記載のとおりとする料飲税の決定及び同表の重加算金欄記載のとおりの重加算金徴収決定をした(以下、右各更正及び各料飲税の決定を併せて「本件更正等」と、また、右各重加算金徴収決定を併せて「本件重加算金徴収決定」と、本件更正等と本件重加算金徴収決定とを併せて「本件課税処分」といい、本件更正等に係る昭和五六年四月ないし昭和六一年八月、同年一一月及び同年一二月の各月を「係争各月」という。)。
(本件更正等に係る課税標準額につき〔証拠略〕。その余の事実は争いがない。)
(四) 原告らは、昭和六二年五月一五日、本件課税処分につき、静岡県知事に対する審査請求をしたが、同知事は、同年七月一八日付で、右審査請求を棄却するとの裁決をした。
(争いがない。)
3 被告の調査
被告は、Aに係る料飲税の課税標準等に関して、第一次更正に先立って次の(一)の調査を、本件課税処分に先立って次の(二)ないし(四)の調査を行なった。
(一) 昭和五九年二月二日午後七時三五分から午後九時二四分まで、被告所部職員三名が、客としてAに入店し、飲食及びディスコダンス等の利用行為を行なったところ、その出店の際、Aの従業員は、予め各入店客ごとに配布してあった売上伝票を基に計算した一万一五八〇円の料金(一名当たり三八六〇円)を請求してその支払を受けたが、右料金が料飲税の免税点を超えるにもかかわらず、公給領収証を交付しなかった。
(〔証拠略〕)
(二) 昭和六一年一一月二九日午後九時から午後一〇時まで、被告所部職員三名が、客としてAに入店し、飲食等の利用行為を行なったところ、入店の際、男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金を請求され、これを支払った。店内では飲食に対する接客サービスはなく、セルフサービス方式のいわゆるフリーフード、フリードリンクによる営業形態であった。
(〔証拠略〕)
(三) 昭和六一年一二月二二日午後九時から午後一〇時まで、被告所部職員三名が客としてAに入店し、飲食等の利用行為を行なったところ、入店の際、男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金を請求され、これを支払ったが、男性の料金については料飲税の免税点を超えるにもかかわらず、公給領収証の交付はなかった。なお、入口壁面に「男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円」との料金掲示があった。店内では、最初の飲み物を除き、飲食に対する接客サービスはなく、セルフサービス方式のいわゆるフリーフード、フリードリンクによる営業形態であった。当日は、同月二四日開催のパーティに係るパーティ券(一名三〇〇〇円)を販売していたが、これに静岡県知事の検印は押捺されていなかった。
(〔証拠略〕)
(四) 被告は、さらに、静岡簡易裁判所裁判官の発付した臨検、捜索、差押許可状に基づいて、昭和六二年一月二二日、所部職員により、原告甲野方居宅、原告乙野方居宅、A及び原告甲野が経営する静岡市〔中略〕所在の飲食店(ディスコティック)であるB(以下、右店舗を「B」という。)の各店内ほかの場所において、臨検、捜索を行った。そして、その際、所部職員は、原告甲野方居宅において、家人が洗濯機の中に投入して攪拌したA及びBの売上伝票、従業員給与明細伝票、仕入伝票類その他の書類並びにこれらの攪拌された後の残片や不流物を差し押さえたほか、原告甲野方の隣家との塀際及び屋外換気装置内からA及びBの帳簿等の書類が入った手提紙袋を、原告甲野方の焼却炉内から焼却された売上伝票類の残片等を、またB及びA各店内において従業員の出勤予定表、パーティ予定表その他の書類をそれぞれ発見して差し押さえた(以下、このときの臨検、捜索及び差押えを「本件強制調査」という。)。
(〔証拠略〕)
4 推計の必要性
原告らは、係争各月におけるAの営業に関し、顧客の利用行為に対する料金が料飲税の免税点を超える場合であっても、公給領収書の作成・交付を怠っており、したがって、その写しを保管していないのみならず、顧客の利用行為の実態を示す売上伝票等の資料も、右3の調査その他の方法で被告が入手したものを除き、すべて廃棄・処分しているところ、被告は、入手した資料によってもAに係る係争各月分の料飲税の課税標準額につき実額で把握することができなかったので、これを推計によって認定する必要性が存在する。
(推計の必要性が存在することは争いがない。その余の事実は、〔証拠略〕)
二 争点
1 静岡県税賦課徴収条例(昭和四七年静岡県条例第八号。但し、昭和六三年法律第一一〇号による地方税法の改正に伴う改正前のもの。以下同じ。)四四条一項は、特別徴収に係る料飲税につき、地方税法(昭和六三年法律第一一〇号による改正前のもの。以下同じ。)一一三条一項の場所(課税場所である料理店等)の経営者をその特別徴収義務者とする旨定めていたから(〔証拠略〕)、仮に、原告甲野がAの経営者であったとすれば、原告甲野は、同人による経営の開始とともに当然に、Aに係る徴収すべき料飲税を納入する義務負担することになる。本件の主たる争点の一は、原告甲野がAに係る係争各月分の料飲税につき原告乙野と連帯して納入義務を負担するかどうか、すなわち、係争各月当時、原告甲野はAの経営者であったかどうか、という点である。
2 被告が本件において主張するAに係る係争各月分の料飲税の課税標準額(一人一回の利用料金が料飲税の免税点(昭和五七年一二月まで二〇〇〇円、昭和五八年一月から二五〇〇円)を超える場合の売上額の各月ごとの合計額)は、本件更正等に係る料飲税の課税標準額と同額であり、その算出根拠は次の三のとおりである。本件の主たる争点の二は、右の課税標準額の適否、特にその算定において用いられた推計方法の合理性の有無である。
三 課税標準額に関する被告の主張 〔略〕
四 推計方法の合理性に関する原告らの主張
1 売上額の推計の不合理
(一) 原告らが被告に対してしたAの昭和六二年一月から平成元年三月分までの料飲税の納入申告に係る顧客数及び売上額は別表第六記載のとおりである。
しかして、被告の推計による係争各月の売上額と原告らの右納入申告に係る各月の売上額とを比較すると、その間にAの営業状況にさして変化は生じてないにもかかわらず、被告の推計による売上額が著しく多額となっていることが明らかである。
Aの顧客は、週のうち土曜日及び日曜日には多いが、平日は閑散としていた上、その収容定員に照らしてみても、被告の推計に係るような多額の売上額を計上することはあり得ない。
このことは、被告の売上額の推計方法が不合理であることを示している。
(二) 被告は、昭和六一年四月分ないし八月分の売上額を、右期間のおしぼりの仕入金額と前年同期間のおしぼりの仕入金額との比によって推計するが、おしぼりの仕入金額の認定に用いた資料であるセントラルタオル売上帳は、原告甲野に対するBを課税場所とする料飲税に関する更正に当たって、被告自身が、信用性に乏しいとして認定資料にしなかったものであるし、また、Aにおいては一人の客が自由に何本ものおしぼりを使用することが可能であったのであるから、おしぼりの仕入金額が、売上額に正比例することはない。したがって、右のようなおしぼりの仕入金額の比に基づいた推計は不合理である。
(三) 被告は、昭和六一年一二月二一日から同月三一日までの間の売上額を、同月一日から同月二〇日までの売上額並びに昭和五五年及び昭和五六年の各一二月の各日ごとの売上額を基礎として推計するが、昭和六一年と昭和五五年及び昭和五六年との間の昭和五七年ないし昭和六〇年における同期間の売上額を考慮しないのは恣意的であって、合理的な推計方法とはいい難い。
2 課税比率の推計の不合理
被告は、課税比率を推計するに当たって、次のようなAの特殊事情を斟酌していない。
すなわち、Aは、昭和五九年一月頃から、その料金形態を、顧客が入店する時間が午後八時以前であれば、男性からは二五〇〇円の、女性からは二〇〇〇円の料金を、また午後八次以降であれば、男性から三〇〇〇円の、女性からは二五〇〇円の入場料金を徴収するが、それ以外は顧客に料金が掛からないという仕組の入場料制としていた。そして、他方で、様々な割引券を配布しており、割引券を持参する顧客に対しては、料金を五〇〇円あるいは一〇〇〇円、場合によっては一五〇〇円値引し、その結果、入場料金はある程度高く設定されているものの、割引券による値引を経て、結局、ほとんどすべての場合、顧客の支払う利用料金は料飲税の免税点(二五〇〇円)以下となるようにし、料飲税の申告、納入をしなくてすむようにするのが原告らの営業方針であった。
これに加え、女性客を男性客よりも多くした方が、店内でのトラブルを避けることができるほか、女性客は料金設定が低額であり割引き券を利用すると利用料金が免税点以下に止まることが多く、結果的に原告らが料飲税の申告、納入を避けることができるため、Aにおいては、男性客だけの、あるいは男性が多いグループの入店を制限するなどして、女性客が顧客全体の概ね七割となるようにして営業を行っていた。
以上の結果として、Aの顧客の支払う利用料金はほとんどすべての場合、料飲税の免税点以下であって、被告の推計に係るような高率の課税比率となることはない。このことは、別表第六記載のとおり、原告甲野が被告に対してしたAの昭和六二年一月分以降の料飲税の納入申告に係る課税比率が、昭和六二年一月分なしい同年一二月分で約二六パーセント、昭和六三年一月分ないし同年一二月分で約二九パーセントに止まることからも明らかである。
したがって、被告の課税比率の推計も不合理というべきである。
第三 争点に対する判断
一 争点1について
1 右第二の一の1の(一)の事実に〔証拠略〕を総合すると、(一) Aに係る料飲税の特別徴収義務者として登録がなされていたのは、昭和五五年一〇月の同店の開店当初から原告乙野であり、また、Aに係る営業行為の日常的な管理も原告乙野がしていたこと、(二) しかし、Aの所在する甲野ビルの建物(静岡市〔中略〕所在、家屋番号〔中略〕の鉄筋コンクリート造陸屋根二階建(現況三階建)店舗)及びその敷地(同所〔中略〕の宅地)ともに原告甲野が所有するものであり、店舗内の内装設備及び什器備品も、一部の消耗品を除き原告甲野の所有に係ること、(三) Aの経理、売上金の管理及び支出金の支払等は原告甲野が行なっており、その収益も原告甲野が取得していたこと、(四) 原告甲野は原告乙野に対し、基本給部分を定額とする給与を毎月支給しており、また、原告乙野の判断で行なわれた顧客に対する特別の割引額を右給与支給額から差し引いたこともあったこと、(五) 原告乙野自身は、Aの開店当初から、これを原告甲野と共同経営しているとの認識を有していたこと、以上の事実が認めらる。
右各事実によれば、Aの開店時からその実質的な経営の主体となっていたのが原告甲野であることが明らかであり、原告甲野が係争各月におけるAの経営者であるものと認められる。
2 なお、〔証拠略〕によれば、昭和五五年九月二〇日付で、右1の(二)の甲野ビルの建物の一部(A店舗に係る部分)につき、原告甲野を賃貸人、原告乙野を賃借人とする賃貸借契約書が作成されている事実を認めることができる。しかし、右各証拠によれば、右賃貸借契約書において差し入れることとされている敷金一三〇〇万円の授受が実際にはなされていないほか、約定の一か月三五万円の賃料もほとんど支払われていないこと(原告甲野は、本人尋問(第一回)において、Aの収益を右敷金に充当していた旨供述するが、その計算関係を示す書類の作成等、右供述を裏付ける事実を認め得る証拠がないほか、未払賃料より先に敷金に充当すること自体経済的合理性が認められないから、右供述を信用することはできない。)、また、原告甲野が、本人尋問(第一回)における供述で、Aの経営者が原告乙野から原告甲野に替ったとする昭和六一年末ないし昭和六二年一月頃においても、Aを閉店したとする平成二年八月においても、未払賃料の清算はされていないこと、以上の事実が認められ、この事実に照らすと、右賃貸借契約書が作成されたからといって、原告甲野と原告乙野との間に右契約書の内容に符合する賃貸借契約が存在したものと認めることはできない。
3 したがって、原告甲野はAに係る係争各月分の料飲税につき原告乙野と連帯して納入義務を負担するものというべきである。
二 争点2について
1 Aに係る係争各月の売上額について
(一) 昭和五六年四月分ないし昭和五七年六月分 〔略〕
(二) 昭和五七年七月分ないし同年一二月分
(1) 右期間の各月別の売上額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の売上額は、推計によってこれを算定するものであるところ、別紙A記載のその推計方法は、Aに係る昭和五七年七月分ないし同年一二月分の売上額の推移が、昭和五六年七月分ないし同年一二月分及び昭和五八年七月分ないし同年一二月分の売上額と同様の季節変動傾向を示すものとの推測の下に、昭和五六年一月分ないし同年六月分及び昭和五八年一月分ないし同年六月分の各売上額の平均値(基準値)に対する、昭和五六年及び昭和五八年の各七月ないし一二月の月ごとの平均値の割合(季節変動値)を算出した上、昭和五七年一月分ないし同年六月分の売上額の平均値に七月ないし一二月の各季節変動値を乗じて得た額を昭和五七年七月分ないし同年一二月分の売上額と推計する、というものである。
しかして、右(一)で認定した昭和五六年一月分ないし昭和五七年六月分の各売上額及び後記(三)で認定する昭和五八年一月分ないし一二月分の各売上額(後記別表第九の二)を基礎とし、昭和五六年ないし昭和五八年の各一月分ないし六月分売上額の平均値に対する右各年の一月ないし一二月(昭和五七年は六月まで)の売上額の割合を算出した結果は別表第八の一のとおりであり、これによると、右各年の月ごとの売上額の推移(季節変動傾向)は相当程度に近似することが看取され、有意の法則性を見出すことができるものというべきであるから、被告の主張する右推計方法は合理性を有するものと認めることができる。
(2) そこで、右(一)で認定した昭和五六年一月分ないし昭和五七年六月分の各売上額及び後記(三)で認定する昭和五八年一月分ないし一二月分の各売上額(後記別表第九の二)を基礎とし、別紙A記載の推計方法に従って、昭和五七年七月分ないし同年一二月分の売上額を算出すると、別表第八の二記載のとおりであり、同表の推計売上額(昭和57年)欄記載の金額が、Aに係る昭和五七年七月分ないし同年一二月分の売上額と認められる。
(三) 昭和五八年一月分ないし同年一二月分 〔略〕
(四) 昭和五九年一月分ないし同年一二月分
(1) 〔証拠略〕によると、ア 被告は本件強制調査の際、原告甲野方居宅において、昭和五八年原告仕入メモ及び昭和五九年原告仕入メモを差し押さえたこと、イ 昭和五八年原告仕入メモは、「A58年」との表題が付され、各月別に、売上額、仕入額並びに十数か所の支払先に対する各支出額が記載された数葉のメモであって、そのうち売上額として記載された金額並びに電気料、ガス代、電話料、ガソリン及び仕入額として記載された金額は右(三)の(1)の昭和五八年原告経費メモと一致すること、ウ また、昭和五八年原告仕入メモに記載された支払先のうち、浜村屋、地中海フード、山海屋、望月ミート、島本商店、トミヤ、第一水産及び名酪(名古屋製酪)はいずれもAの仕入先であるところ、右各店に対する支出額として記載された金額を集計すると別表第一〇の一記載のとおりであり、その合計額九五一万二一七〇円は、昭和五八年原告仕入メモに仕入額として記載された金額の合計額と必ずしも一致しないが、Aに係る昭和五八年分の年間実仕入額と判断されること、エ 昭和五九年原告仕入メモは、それぞれに「59年A」又は「59年A」との表題が付された数葉のメモであって、各月別に、クリーニング代、駐車料、電気代、給与などの経費の額の記載とともに、仕入額の記載もあり、その年間合計額九八一万二一四九円がAに係る昭和五九年分の年間実仕入額と判断されること、以上の事実を認めることができる。
(2) ところで、〔証拠略〕によれば、原告乙野の昭和五九年分所得税確定申告書に添付されたAに係る決算書記載の売上額は三二〇〇万六七四〇円とされていることが認められるが、右金額は、右(一)ないし(三)で認定した昭和五六年ないし昭和五八年分の年間売上額と比較して著しく少なく(右各年の年間売上額の約二九ないし三五パーセントであるに過ぎない。)、かつ、本件各証拠中に、かかる極端な売上減少の事実又はその原因を窺い得るようなものは一切存在せず、さらに、原告乙野の昭和五八年分所得税確定申告書添付のAに係る決算書記載の売上額が、実際の売上額ではなく、これを圧縮した金額と認められることは、右(三)の(2)のとおりであって、これらの事実に照らすと、右の昭和五九年分所得税確定申告書添付のAに係る決算書記載の売上額も、Aに係る実際の売上額ではなく、これを圧縮した金額であるものと推認することができる。
(3) しかしながら、Aに係る昭和五九年一月分ないし同年一二月分の売上額を実額で認定することのできる資料は他に存在せず、被告主張の売上額はこれを推計により算出するものであるところ、別紙B記載のその推計方法は、ア 昭和五八年一月分ないし同年一二月分の売上額の合計額(昭和五八年分年間売上額)から昭和五八年分年間仕入額を控除した額を右昭和五八年分年間売上額で除して、昭和五八年分差益率(売上総利益率)を算出し、イ 昭和五九年分年間仕入額を、一から昭和五八年分差益率を控除した率(売上原価率に相当する。)で除して得た額を、昭和五九年一月分ないし同年一二月分の年間売上額と推計し、ウ さらに、右イの推計年間売上額を昭和五八年一月分ないし同年一二月分の月別売上額のその年間合計売上額に対する割合により按分して、昭和五九年一月分ないし同年一二月分の各月分の売上額と推計する、というものである。
しかして、同一の飲食店営業における近接した年における年間仕入額と年間売上額の割合には、特段の事由のない限り、近似性が認められるのが通常であり(本件において、右特段の事由の存在を認めるに足りる証拠はない。)、また、右(二)の(1)のとおり、Aにおける各年の月ごとの売上額の推移(季節変動傾向)には相当程度の近似性があるものと認められるから、被告の主張する右推計方法は合理性を有するものと認めることができる。
(4) そこで、右(1)の昭和五八年分年間仕入額九五一万二一七〇円及び昭和五九年分年間仕入額九八一万二一四九円並びに右(三)で認定した昭和五八年一月分ないし同年一二月分の売上額(別表第九の二。その年間合計額は九二五八万五二八〇円)を基礎として、別紙B記載の方法に従って、昭和五九年一月分ないし同年一二月分の年間売上額を算出すると、次の計算式のとおり、九五二六万三五八二円となり、これを昭和五八年一月分ないし同年一二月分の月別売上額のその年間合計売上額に対する割合により按分して、昭和五九年一月分ないし同年一二月分の各月分の売上額を算出すると別表第一〇の二のD欄記載のとおりとなる。
(計算式)1 昭和58年1月分ないし同年12月分差益率
<省略>
2 昭和59年1月分ないし同年12月分の推計年間売上額
<省略>
(五) 昭和六〇年一月分ないし同年一二月分
(1) 〔証拠略〕によると、ア 被告は本件強制調査の際、原告甲野方居宅において、昭和六〇年原告仕入元帳及び昭和六〇年原告仕入明細書を差し押さえたこと、イ 昭和六〇年原告仕入元帳は、Aに係る昭和六〇年一月から同年一二月までの仕入額が各日ごとに記帳された会計帳簿であり、その年間合計額七三八万〇五七四円は、原告乙野の昭和六〇年分所得税確定申告書に添付されたAに係る決算書記載の売上原価の額と一致すること、ウ 他方、昭和六〇年原告仕入明細書は、昭和六〇年一月から同年一二月までの間のAの主要仕入先(山海屋、浜村屋、望月ミート及び八百林。以下「主要四仕入先」という。)からの仕入れに係る支出日及び支出額を月別、仕入先別に記載した部分、並びに右期間のAの主要四仕入先を除く各仕入先からの仕入及びその他の経費の支払に係る支出日、支出先及び支出額を月別に記載した部分(但し、同年一月分が欠けている。)などからなるものであること、エ そして、昭和六〇年原告仕入明細書には、これに記載されている個別の支出のうちの一部に○印が付してあり、これと昭和六〇年原告仕入元帳とを対比すると、昭和六〇年原告仕入元帳には、昭和六〇年原告仕入明細書記載の仕入に係る各支出のうち、○印の付されているものだけが記載されており、○印の付されていないものはこれに記載されていないこと(但し、一部に転記の際の過誤によるものと考えられる金額の相違があるほか、昭和六〇年原告仕入明細書では同一日に同一の支出先に対する支出が複数あるものとして記載されている場合に、昭和六〇年原告仕入元帳ではその金額を合算して一回の支出として記載されている部分もある。)、オ もっとも、逆に、昭和六〇年原告仕入元帳に記載された支出であって、昭和六〇年原告仕入明細書には記載のないものも僅かながら存在すること、以上の事実を認めることができる。
(2) 右(1)の事実によれば、昭和六〇年原告仕入元帳は、原告乙野の昭和六〇年分の所得税確定申告に当たり、Aに係る仕入額の一部を除外するために、昭和六〇年原告仕入明細書に記載された仕入額を、その一部を除外した上で転記し、さらに昭和六〇年原告仕入明細書に記載のない若干の仕入額を付加して作成したものであることが推認される。
そうすると、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分のAに係る実際の仕入額は、昭和六〇年原告仕入明細書に記載された主要四仕入先及びそれ以外の仕入先と認められる支出に対する支出額に、昭和六〇年原告仕入元帳に記載があって、昭和六〇年原告仕入明細書に記載のない仕入額を加算して算出した金額であると認めることができ、これを集計すると、別表第一一の一記載のとおりその年間合計額は一〇八二万三三一八円となる。なお、被告は、右の実際の仕入額の年間合計額が一〇七三万三〇三一円であると主張するところ、被告が集計した〔証拠略〕は右被告主張に沿うものであるが、右〔証拠略〕の集計数値のうち、浜村屋欄に係る一月分及び五月分並びに八百林欄に係る五月分に違算があるほか、その他欄は、主要四仕入先以外の仕入先に係る仕入額を記載した部分であり、その一月分の仕入額は、右(1)のとおり昭和六〇年原告仕入明細書にこれを記載した部分が欠けているものの、少なくとも昭和六〇年原告仕入元帳に同年一月分の主要四仕入先以外の仕入先に対する支出額として記載された額は存在するものと認められるから、その合計額を一月分の仕入額と認むべきであり、〔証拠略〕のうちの右各部分は採用することができない。
(3) ところで、〔証拠略〕によれば、原告乙野の昭和六〇年分所得税確定申告書に添付されたAに係る決算書記載の売上額は三三四五万六一〇〇円とされていることが認められるが、右金額が昭和五九年までの各年の年間売上額と比較して著しく少ない額であり、Aに係る昭和六〇年分の実際の売上額ではなく、これを圧縮した金額であるものと推認されることは、右(四)の(2)で述べたと全く同様である。
しかしながら、Aに係る昭和六〇年一月分ないし同年一二月分の売上額を実額で認定することのできる資料は他に存在せず、被告主張の売上額はこれを推計により算出するものであるところ、別紙C記載のその推計方法は、昭和五九年一月分ないし同年一二月分の場合と同様、昭和六〇年分年間仕入額を、一から昭和五八年分差益率を控除した率(売上原価率)で除して得た額を昭和六〇年一月分ないし同年一二月分の年間売上額と推計した上、右推計年間売上額を昭和五八年一月分ないし同年一二月分の月別売上額のその年間合計売上額に対する割合により按分して、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分の各月分の売上額と推計する、というものである。そして、右推計方法が合理性を有するものと認められることは、右(四)の(3)で述べたと同様である。
(4) そこで、右(2)で認定した昭和六〇年分年間仕入額一〇八二万三三一八円及び右(四)の(4)の昭和五八年分差益率〇・八九七を基礎として、別紙C記載の方法に従って、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分の年間売上額を算出すると、次の計算式のとおり、一億〇五〇八万〇七五七円となり、これを昭和五八年一月分ないし同年一二月分の月別売上額のその年間合計売上額に対する割合により按分して、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分の各月分の売上額を算出すると別表第一一の二のD欄記載のとおりとなる。
(計算式)
<省略>
(六) 昭和六一年一月分ないし同年三月分
(1) 右期間の各月別の売上額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の売上額は、推計によってこれを算定したものであるところ、別紙D記載のその推計方法は、Aに係る昭和六〇年四月分ないし同年八月分の売上額の平均値(基準値)に対する同年一月分ないし三月分の各売上額の割合(季節変動値)を算出した上、昭和六一年四月分ないし同年八月分の売上額の平均値に一月ないし三月の各季節変動値を乗じて得た額を昭和六一年一月分ないし同年三月分の売上額と推計する、というものである。
しかして、Aに係る昭和六〇年及び昭和六一年の月ごとの売上額の推移(季節変動傾向)は、少なくとも後記(八)の店舗改装のための休業に至った昭和六一年八月三〇日前までは、右(二)の場合と同様、相当程度に近似し、有意の法則性を見出すことができるものと推認されるから、右推計方法の推計の手法自体は合理性を有するというべきであるが、後記(七)のとおり、右推計方法の基礎とされた各数値のうち、昭和六一年八月分の売上額は、同年四月分ないし七月分と異なり、おしぼりの販売代金額を用いた推計方法によってこれを算定することができないものというべきであるから、結局、Aに係る昭和六〇年一月分ないし同年七月分の売上額及び後記(七)で認定する昭和六一年四月分ないし同年七月分の売上額を用いて推計する限度において合理性が認められるものというべきである。
(2) そこで、右(五)で認定したAに係る昭和六〇年一月分ないし同年七月分の売上額及び後記(七)で認定する昭和六一年四月分ないし七月分の売上額(後記別表第一三の三)を基礎とし、別紙D記載の方法に準じて、昭和六一年一月分ないし同年三月分の売上額を算出すると別表第一二記載のとおりであり、同表の推計売上額(昭和61年)欄記載の金額が、Aに係る昭和六一年一月分ないし同年三月分の売上額と認められる。
(七) 昭和六一年四月分ないし同年八月分(八月分は同月二九日まで)
(1) 〔証拠略〕によると、ア Aにおいては店舗内で顧客に提供するおしぼりを、DXマット、Fマチック、モップなどとともにセントラルタオルから仕入れていたところ、被告は、セントラルタオルに対する調査によって、セントラルタオル売上帳を入手したこと、イ セントラルタオル売上帳は、セントラルタオルが、Aに対する売上品名、単価、数量、売上金額、受入金額を日付とともに記載した会計帳簿であり、昭和六〇年四月から昭和六一年一二月まで(但し、昭和六一年八月から同年一〇月までを除く。)、毎月、おしぼり並びにDXマット、Fマチック及びモップ等を売り上げた旨が記載されているところ、このうち、おしぼり及びDXマットは毎月売上が計上されており、Fマチック及びモップは売上の計上がない月も少ないながら存在するが、少なくともその一方は毎月売上が計上されていること、ウ セントラルタオル売上帳に基づく、Aに対する昭和六〇年四月分ないし同年八月分及び昭和六一年四月分ないし同年七月分のおしぼりの売上を集計すると別表第一三の一記載のとおりとなること、以上の事実を認めることができる。
(2) 被告は、別表第一三の一記載のほかに、昭和六一年四月分ないし同年八月分のおしぼりの販売代金が六万六八一〇円であることが判明した旨主張するが、前掲各証拠によれば、セントラルタオル売上帳に、昭和六一年八月分の売上に関する記帳がないことは明らかである。
もっとも、〔証拠略〕によれば、被告は、セントラルタオルのAに対する昭和六一年八月三日付請求書(同年八月分)及び同年九月二六日付領収書を入手したこと、そして、右請求書には、同年八月分の請求金額として、不動文字で「オシボリ」と印刷された欄に一万九三五〇円との記載があり、右領収書記載の領収金額も同額とされていることが認められるから、別表第一三の一の昭和六一年四月分ないし同年七月分の売上額四万七四六〇円に右一万九三五〇円を加算すれば、被告の右主張と符合することになる。
しかしながら、本件証拠上、右請求書及び領収書の入手先が必ずしも明瞭ではない上、その内容をなす昭和六一年八月分売上がセントラルタオル売上帳に記載されていない理由も明らかではない。のみならず、右(1)のとおり、セントラルタオル売上帳に記帳のある他の月では、おしぼりのほかDXマット並びにFマチック又はモップの少なくとも一方の売上が毎月計上されているのに、右請求書上は、不動文字による「オシボリ」との欄に一万九三五〇円と記載された以外には請求金額の記載がないから、右金額がおしぼりのほかDXマット等の販売代金を含む請求金額であることも考えられないではない。さらに、前掲各証拠によれば、被告は、右請求書及び領収書とともに昭和六一年八月分のおしぼり納品明細カードを入手したこと、これによると、同月中にセントラルタオルがAに納品したおしぼりの合計数量が四三〇〇とされていること、他方、昭和六〇年八月を含むそれまでの月のおしぼりの売上数量は一三〇〇から二六〇〇までの間であることが認められるところ(なお、右おしぼり納品明細カード自体にはこれが昭和六一年八月分のものであることを示すような記載はないが、セントラルタオル売上帳に記帳のある他の月ではおしぼりの売上数量を四三〇〇とするものはないこと、及び右おしぼり納品明細カードに記入された納品日と納品すべき曜日との関係が昭和六一年八月と符合すること(昭和六〇年四月から昭和六一年一二月までの間にこれが符合する月は、昭和六一年八月のほかは昭和六〇年一一月のみである。)に照らして、右おしぼり納品明細カードが昭和六一年八月分のものであることは明らかである。)、右事実に徴すると、昭和六一年八月分のおしぼりの納品数量はそれまでの月と比較して顕著に増加しているのみならず、仮に、前記の代金請求額一万九三五〇円全額がおしぼりの売上に係るものとすれば、計算上、その単価が従前の七円から四・五円に減少したこととなるから、販売の目的物であるおしぼりの種類ないし形態に変更があった可能性も窺われる(なお、前掲各証拠によれば、昭和六一年一一月分及び同年一二月分のおしぼりの納品数量はさらに増加しており、その増加の度合いは、後記のAの店舗改装による顧客数の増加ないしこれを見込んだ注文数量の増加を考慮したとしても、なお顕著であるものといわざるを得ないし、また、その単価は計算上やはり四・五円となることが認められる。)。
以上のとおり、右請求書及び領収書によって昭和六一年八月分のAに対するおしぼりの販売代金額を一万九三五〇円と認定すること自体に疑問が存するのみならず、仮にこれが昭和六一年八月分のおしぼりの販売代金額であるとすれば、販売目的物に変更があったことも考えられるのであるから、前記(1)及び別表第一三の一の昭和六一年四月分ないし同年七月分の販売代金額に右一万九三五〇円を加算して同年八月分までの販売代金額とすることは相当でないものといわざるを得ない。
(3) 他方、原告らは、セントラルタオル売上帳は信用性が乏しいと主張するが、右(2)に挙げた各点がセントラルタオル売上帳の記帳自体からは明確にならないとしても、これに記帳された金額等が正確性を欠くという訳ではなく、少なくとも昭和六一年七月分までの記帳部分については、その信用性が乏しいとする根拠は見当たらないから、右主張は失当である。
(4) ところで、Aに係る昭和六一年四月分ないし同年八月分の売上額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の売上額はこれを推計により算出するものであるところ、別紙E記載のその推計方法は、ア Aに係る昭和六〇年四月分ないし同年八月分の売上額の合計額に、セントラルタオルのAに対する昭和六一年四月分ないし同年八月分のおしぼり販売代金合計額を昭和六〇年四月分ないし同年八月分の販売代金合計額で除して得た割合を乗じて算出した額を、昭和六一年四月分ないし同年八月分の合計売上額と推計し、イ 次いで、右アの推計合計売上額を、昭和六〇年四月分ないし同年八月分の月別売上額のその合計売上額に対する割合に按分して、昭和六一年四月分ないし同年八月分の各月分の売上額と推計する、というものである。
しかして、飲食店において、顧客に提供するおしぼりの種類や提供の仕方に変更がなければ、近接する年の対応する月相互間におけるおしぼりの消費量と売上額との間に比例的な相関関係が存在することは容易に推認されるところである。
この点につき、原告らは、Aにおいては一人の客が自由に何本ものおしぼりを使用することが可能であったのであるから、おしぼりの仕入金額が、売上額に正比例することはないと主張するが、仮にAにおけるおしぼりの提供方法が右原告ら主張に係るようなものであったとしても、その方法に変更がない限りにおいては、各顧客の使用本数の差異は結局は統計的な月間使用量のうちに捨象されるものと考えられるから、右主張は当を得ないものといわざるを得ない。
したがって、右推計方法の推計の手法自体は合理性を有するというべきであるが、その基礎となる数値のうち、昭和六一年八月分のおしぼりの販売代金額として被告が主張する額を採用し得ないことは右(2)のとおりであるから、右推計方法により同月分を含めた売上金額を算定することは合理性を欠くことになり、結局Aに係る昭和六〇年四月分ないし同年七月分の売上額、セントラルタオルのAに対する同年四月分ないし同年七月分並びに昭和六一年四月分ないし同年七月分のおしぼり販売代金額を用いて、Aに係る昭和六一年四月分ないし同年七月分の売上額を推計する限度において合理性が認められるものというべきである(なお、セントラルタオルのAに対する昭和六〇年四月から昭和六一年七月までのおしぼりの販売に係る単価は終始七円であるから、右期間内であれば、おしぼりの消費量をその販売代金額に置き換えて推計することにも問題は生じない。)。
そして、右(1)(別表第一三の一)の昭和六〇年四月分ないし同年七月分及び昭和六一年四月分ないし同年七月分のおしぼりの販売代金並びに右(五)で認定した昭和六〇年四月分ないし同年七月分の売上額を基礎とし、別紙E記載の方法に準じて算出したAに係る昭和六一年四月分ないし同年七月分の売上額の合計額は、別表第一三の二記載のとおり三三七二万六六八三円であり、これを昭和六〇年四月分ないし同年七月分の月別売上額のその合計売上額に対する割合により按分して、昭和六一年四月分ないし同年七月分の各月分の売上額を算出すると別表第一三の三のD欄記載のとおりとなる。
(5) なお、右(六)の(1)のとおり、Aに係る昭和六〇年及び昭和六一年の月ごとの売上額の推移(季節変動傾向)が、少なくとも後記の店舗改装のための休業に至った昭和六一年八月三〇日前までは、相当程度に近似し、有意の法則性を見出すことができるものと推認されるから、昭和六一年八月分売上額については、右(六)の推計方法に準じて、昭和六〇年四月分ないし同年七月分の売上額の平均値(基準値)に対する同年八月分売上額の割合(季節変動値)を算出し、昭和六一年四月分ないし同年七月分の売上額の平均値に右季節変動値を乗じて得た額に、後記のとおり同年八月三〇日から休業したことを考慮して、さらに三一分の二九を乗じて算出した額とすることが相当であり(なお、これが本件におけるAの売上額の算定に係る被告の推計主張を逸脱するものとはいえない。)、その額は別表第一三の四のとおり七四九万三三〇六円となる。
(八) 店舗改装による休業(昭和六一年八月三〇日から同年一一月一四日まで)
〔証拠略〕によれば、Aは、昭和六一年八月三〇日から休業して店舗に改装を施し、これにより収容定員を従前の約八〇名から約二〇〇名に増加させたこと、そして、その改装終了後、同年一一月一三日及び同月一四日の施設無料提供日を経て、同月一五日から営業を再開したことが認められる(〔証拠略〕中の右認定に反する部分は措信し得ない。)。
(九)昭和六一年一一月分(同月一五日から同月三〇日まで)
(1) 右期間の売上額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の売上額は、推計によってこれを算定したものであるところ、別紙F記載のその推計方法は、昭和六〇年一一月分売上額に、昭和六〇年一二月分売上額に対する昭和六一年一二月分売上額の割合を乗じて得た額に、さらに昭和六一年一一月の全日数に対する営業日数の割合である三〇分の一六を乗じて算出した額を昭和六一年一一月一五日から同月三〇日までの売上額と推計するものである。
しかして、右推計方法においては推計の基礎として、昭和六一年における売上額を昭和六〇年におけるそれと比較する期間が右各年の一二月のみの一か月間であって、これが短期間であることは否めないが、売上額を算定すべき期間(昭和六一年一一月一五日から同月三〇日まで)が、右(八)のとおりAが改装工事を行ない。その結果収容定員に変更が生じた後の期間であるから、売上額を昭和六〇年と比較するために採用すべき昭和六一年に属する期間についても 右改装後の期間であることを必要とすることになるので、これを一二月のみとしたことはやむを得ないものというべきであり、また、右の売上額を算定すべき期間が右改装工事後の期間であることを前提として、他により適切な推計方法があるものとも認め得ないから、右推計方法が合理性を欠くとまでいうことはできない。
(2) そこで、右(五)(別表第一一の二)で認定した昭和六〇年一一月分売上額六九三万四九七九円、同年一二月分売上額一五七九万七九三三円並びに後記(一〇)の(3)で認定する昭和六一年一二月分売上額二三四四万六八八四円を基礎として、別紙F記載の方法に従って、昭和六一年一一月分(同月一五日から同月三〇日まで)の売上額を算出すると、次の計算式のとおり、五四八万九四四八円となる。
(計算式)
<省略>
(一〇) 昭和六一年一二月分
(1) 同月一日から同月二〇日までの売上額 〔略〕
(2) 同月二一日から同月三一日までの売上額
ア 右期間の売上額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の売上額は、推計によってこれを算定したものであるところ、別紙G記載のその推計方法は、昭和五五年一二月及び昭和五六年一二月の各第二水曜から第三土曜までの売上額合計に対する右各月の各第三日曜から第五水曜までの売上額合計の割合に、昭和六一年一二月の第二水曜から第三土曜までの売上合計を乗じた額を昭和六一年一二月の第三日曜から第五水曜まで(同月二一日から同月三一日まで)の売上額合計と推定するものである。
イ しかして、〔証拠略〕によって認定することのできる右(一)の昭和五五年原告日計分析表記載の昭和五五年一二月分売上日額及び右(一)(別表第七)で認定した昭和五六年・五七年原告ダイアリー記載の昭和五六年一二月分売上日額並びに右(1)で認定した昭和六一年一二月売上メモ記載の昭和六一年一二月一日ないし同月二〇日分の売上日額を基礎とし、右各月のそれぞれ中間部分の一一日間に当たる第二水曜から第三土曜までの売上額の平均値に対する右各月に属する日(昭和六一年一二月は二〇日まで)の売上額の割合を算出した結果は別表第一五のとおりであるところ、これによると、右各月における日ごとの売上額の推移(変動傾向)は、週(曜日)を変動の単位として相当程度に近似することが看取され、その間に有意の法則性を見出すことができるものというべきである。そして、このことと、昭和五五年、昭和五六年及び昭和六一年とも、第五水曜が当該月の(したがって、当該年の)最終営業日であることとを併せ考えると、昭和六一年一二月二一日から同月三一日まで(第三日曜から第五水曜まで)の売上額は、昭和五五年及び昭和五六年の各第三日曜から第五水曜までの売上と同様の傾向により推移するものと推認される。したがって、被告の主張する右推計方法は、合理性を有するものと認めることができるところ、右の昭和五五年一二月分売上日額及び昭和五六年一二月分売上日額並びに昭和六一年一二月一日ないし同月二〇日分の売上日額に基づき、右推計方法に従って昭和六一年一二月二一日から同月三一日までの売上額を算出すると、別紙G記載のとおり九六八万五一九四円となる。
ウ 因みに、右推計方法は、その計算過程において、各月の第三日曜から第五水曜までの売上額合計を、第二水曜から第三土曜までの売上額合計で除した割合を用いるものであるところ、これに代って、各月の第三日曜から第五水曜までの売上額合計を、判明している第一火曜から第三土曜までの売上額合計で除した割合を用いることも可能であると考えられるが、そうした場合に昭和六一年一二月二一日から同月三一日までの売上額を算出すると一〇六八万三三九一円となるから、被告の主張する右推計方法はむしろ控え目な方法であるものといえる。
なお、原告らは、被告の主張する右推計方法が、昭和五五年一二月及び昭和五六年一二月の各日ごとの売上額を基礎とすることに対し、昭和六一年と昭和五五年及び昭和五六年との間の昭和五七年ないし昭和六〇年における同期間の売上額を考慮しないのは恣意的であって、合理的な推計方法とはいい難いと主張するが、昭和五七年ないし昭和六〇年の各一二月分の売上額は、これを実額認定した昭和五八年一二月分を含め、その月の売上日額(少なくとも算定すべき期間である昭和六一年一二月二一日から同月三一日に何らかの意味で相当する部分とその余の部分との売上額の内訳)が判明していないから、これを昭和六一年一二月二一日から同月三一日までの売上額の推計に用いることは不可能であり、原告らの右主張は失当である。
(3) 昭和六一年一二月分売上額合計
右(1)及び(2)によれば、Aに係る昭和六一年一二月分売上額は、計二三四四万六八八四円となる。
(二) 売上額についての原告らの主張について
(1) 原告らは、Aに係る昭和六二年一月から平成元年三月分までの料飲税の納入申告に係る顧客数及び売上額が別表第六記載のとおりであるとして、その対比の上で被告の推計による売上額が著しく多額であるとか、Aの顧客は、週のうち土曜日及び日曜日には多いが、平日は閑散としており、その収容定員に照らしてみても、被告の推計に係るような多額の売上額を計上することはあり得ないと主張する。
(2) しかし、Aに係る昭和六二年一月から平成元年三月分までの料飲税の納入申告に係る顧客数及び売上額が別表第六記載のとおりであるとしても、右納入申告に係る売上額等が当該月分のAの現実の売上額等と符合するものであるとは直ちに認め難い。
すなわち、この点につき、〔証拠略〕中に、右納入申告がAの売上等の集計表に基づく適正なものであるとの供述部分があるが、その集計表を含め右供述を裏付けるに足りる的確な証拠がないこと、〔証拠略〕によって認定することのできるAに係る昭和五六年四月分ないし昭和五七年六月分及び昭和五八年一月分ないし同年一二月分の各料飲税の納入申告に係る売上額を、右(一)及び(三)のとおり実額で認定した右期間の実際の売上額と対比すると(対比した結果は別表第一六記載のとおり)、いずれの月分においても料飲税の納入申告に係る売上額は著しく過少であること、右第二の一の3の(四)及び後記三の2の(一)のとおり、被告による本件強制調査の際、原告甲野の家人が昭和六二年一月分を含む売上伝票を洗濯機に投入攪拌するなどして、その隠滅を図ったこと等を併せ考えると、〔証拠略〕の右供述部分は到底信用し得ず、他に、別表第六記載の昭和六二年一月から平成元年三月分までの料飲税の納入申告に係る顧客数及び売上額が当該月分のAの現実の売上額等と符合することを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、右納入申告に係る売上額との対比から右(二)、(四)ないし(七)、(九)及び(一〇)の(2)の各売上額の認定に係る推計に合理性がないとすることはできない。
(3) また、Aの収容人員が昭和六一年八月から一一月までの改装の前においては約八〇名、右改装後は約二〇〇名であったことは右(八)のとおりであるところ、この収容人員によっては右(二)、(四)ないし(七)、(九)及び(一〇)の(2)の各推計に係る売上額を挙げることが不可能ないし困難であるというような事実を認めるに足りる証拠はないから(なお、一営業日内において入店客は順次回転してゆくものであって、右収容人員が一営業日の入店客数の上限を画すものでないことはいうまでもない。)、右収容人員数との関係で右各推計に合理性がないとすることはできないし、さらに、Aの顧客は、週のうち土曜日及び日曜日には多いが、平日は閑散としているといった漠然とした事実に基づき、右推計の合理性を否定することもできない。
(4) したがって、原告らの右(1)の主張は失当である。
2 課税標準額について
(一)(1) 右第二の一の3の(一)ないし(三)の各事実に、〔証拠略〕を併せ考えると、ア Aの開店の際、料飲税の特別徴収義務者の登録に伴って静岡県静岡財務事務所に提出された飲食物のメニューには個々の料理又は酒類ごとに価格が付されており、その当時は、顧客の個別の注文に応じて飲食物が提供され、その代金を合算して請求徴収する料金形態であったと判断されること、イ 被告所部職員が昭和五六年五月二八日にAの料飲税申告の指導のため調査した際、その料金体系は伝票に基づく後払いであるが、顧客一人当たり六〇〇円のテーブルチャージ(固定料金)を加算徴収していたこと、ウ 被告が第一次更正の対象とした昭和五八年五月分ないし同年一〇月分におけるAの料金形態も売上伝票に基づく後払いであり、テーブルチャージを加算徴収していたこと、エ 被告所部職員が昭和五九年二月二日に客としてAに入店して調査した際においても、その料金形態は、予め各入店客ごとに配布してあった売上伝票を基に計算して徴収する後払いであり、顧客一人当たり六〇〇円のテーブルチャージが加算徴収されたこと、オ 被告所部職員が昭和六一年一一月二九日及び同年一二月二二日に、客としてAに入店して調査した際における料金形態は、入店の際に男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金を徴収し、セルフサービス方式によるいわゆるフリーフード、フリードリンク制で飲食物の提供を行なう前払制であり、同年一二月二二日の調査時には入口壁面に「男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円」との料金掲示もあったこと、カ 被告が昭和六一年三月二四日にAの利用者から提供を受けたAの割引券には、男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金額のほか、八時までに来場した客につき一名五〇〇円を割り引く旨等の記載があること、以上の事実を認めることができる。
右事実によれば、本件係争各月中のAの料金形態は、昭和五六年四月から昭和五九年二月までは、顧客の個別注文による飲食物の料金を合算して顧客が出店する際に徴収する伝票制であったこと、また、昭和六一年三月以降は、顧客が入店する際に男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金を徴収して、セルフサービス方式でいわゆるフリーフード、フリードリンクによる飲食物を提供する入場料制であったことが推認できる(〔証拠略〕中には、入場料制当時の入場料金に関し、午後八時までは男性二五〇〇円、女性二〇〇〇円であった旨供述する部分があるが、割引券による割引後の金額として述べるのであれば格別、本来の入場料金として述べるのであれば、右オ及びカの事実に照らし、右供述部分は信用できない。)。
昭和五九年三月から昭和六一年二月までの料金形態についてはこれを明らかにすることのできる証拠がなく、不明であるというほかはない(〔証拠略〕中には、Aに係る料飲税の申告がなされなくなった昭和五九年一月以降入場料制を採用した旨供述する部分があるが、右第二の一の3の(一)の事実に照らして、右供述部分を信用することはできない。)。
(2) また、〔証拠略〕によれば、ア 第一次更正に先立つ調査において、被告は、原告甲野から、Aに係る昭和五八年五月分ないし同年一〇月分の売上伝票の提出を受けたこと、イ 被告が、右売上伝票を検討したところ、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票の大多数は、伝票上部の日付、入店時間、テーブル番号及び注文に係る飲食物名、その価格等を記載する欄の筆跡と、伝票下部の料金計算欄の筆跡とが異なっており(これは、飲食物の注文を受けて提供をする従業員(ウェイター)と、料金徴収をする従業員とが別であることに符合する。)、また、従業員(ウェイター)のサインがあるのに対し、同年五月分ないし同年七月分の売上伝票のほとんどすべては、伝票の上部及び下部の筆跡が同じで、かつ、従業員(ウェイター)のサインもないことから、当該伝票に係る売上時に作成されたものではなく、後日新たに作成されたものと判断されたこと、ウ また、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票(合計七三九枚)中には、右イと同様、後日新たに作成されたと判断されるものが五一枚あったほか、当該伝票と重なった用紙に、当該伝票には記載されていない数字または当該伝票に記載されたものと異なる数字を書き入れたことによる筆圧痕跡が残っているものが多数あり、このことにより、実際の料金計算の際には、複写式の数枚重ねの伝票の上側の用紙を用い、提出された下側の伝票とは異なる料金計算をして、その料金を請求徴収していたものと判断されたこと、エ そして、被告が提出された伝票に残された筆圧痕跡を判読した結果、提出された伝票においては一律に一人六〇〇円が計上されているアドミッションチャージが、実際には金曜日及び土曜日には一人八〇〇円の金額で計算され、また、サービスチャージ及び税金の名目で、飲食物の料金とアドミッションチャージとを合算した額の一割に当たる額がそれぞれ加算計上されるのが通例であることが判明したこと、オ そこで、被告は、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の各売上伝票ごとに、右判明した結果に従い、原則として、金曜日及び土曜日のアドミッションチャージを八〇〇円とし、かつ、飲食物の料金とアドミッションチャージの合計額の一割をサービスチャージとして徴収したものとしたほか、場合により伝票に残された個別の筆圧痕跡の数字に従って、伝票記載の料金額を修正したこと、カ 以上の結果に基づき、被告は、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分については、右オの修正した料金額に基づき、また、同年五月分ないし同年七月分については、売上伝票の記載が信用できないとして、同年八月分ないし同年一〇月分の修正結果等に基づく推計により、第一次更正をしたこと、キ 右昭和五八年八月分ないし同年一〇月分売上伝票に係る月日、顧客の人数、伝票記載の料金額、被告が修正した料金額及び右修正料金額を基礎とした顧客一名当りの料金額を集計すると、別表第一七のA欄記載のとおりであること(なお、同表の備考欄の「書換」との記載は、当該売上伝票が後日に作成されたものであることを示す。)、以上の事実を認めることができる。
しかして、右事実並びに前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告が原告甲野から提出を受けた昭和五八年五月分ないし同年一〇月分の売上伝票のうち、同年五月分ないし同年七月分売上伝票の記載が信用できないものと判断したこと、また、被告が同年八月分ないし一〇月分売上伝票記載の料金額に修正を加えたこと、並びにその修正方法及び修正した料金額はいずれも相当であるものと認めることができる。
(3) さらに〔証拠略〕によると、ア 本件強制調査の際、被告は、原告甲野方居宅内において、洗濯機で攪拌された状態のA及びBの売上伝票(その残片を含む。)計六二一枚を差し押さえ、分類整理のため、これに通し番号を付したこと(乙第二六号証は通し番号一から五〇二までの右売上伝票の写しであり、同号証の各伝票に付されている番号がその通し番号である。)、イ 右各売上伝票の判読が可能な部分の記載内容の概要は、別表第一八の伝票記載欄中の各欄のとおりであること、ウ 被告は、右売上伝票の記載内容から判明する料金形態の相違、伝票ナンバーの連続性、担当従業員名等を手がかりとして、個々の売上伝票をA、Bの店舗別に分類し、かつ各売上伝票に係る売上年月日、料金額及び顧客数を認定してこれを集計したところ、その分類、認定及び集計の結果は別表第一八の認定欄中の各欄記載のとおりであること、以上の事実を認めることができる。
しかして、前掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、右の個々の売上伝票に対する被告の店舗別分類及び売上年月日、料金額及び顧客数の認定、集計はいずれも相当であるものと認めることができる。
(二) ところで、Aに係る係争各月分の料飲税の課税標準額を実額で認定することのできる資料は存在せず、被告主張の課税標準額は、係争各月を料金形態及び料飲税の免税点の別に応じた四期間に区分した上で、各期間における課税比率(課税売上額合計の総売上額に対する比率)を算定し、これを各月の売上額に集ずる推計方法により算出するものであるから、以下、右の区分された各期間ごとに、その推計方法の当否につき検討する。
(1) 昭和五八年一月分ないし昭和五九年二月分
ア 便宜上、右の期間から検討する。
右期間は、免税点が二五〇〇円であり、右(一)の(1)のとおり、Aが伝票制の料金形態を採用していた時期に当たるところ、被告は、右(一)の(2)の昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票に係る修正後の料金額に基づき、一人当たりの料金額が右の免税点を超える場合の売上額の合計総売上額に対する割合を〇・四九五と算定し、これを右期間の課税比率と推計するものである。
イ しかして、昭和五八年八月ないし同年一〇月は右期間の一部であるとともに、右売上伝票は原告甲野から提出されたものであり、このことと、右(一)の(2)のとおり、同時に提出された同年五月分ないし同年七月分の売上伝票が信用できないものであること、同年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票の枚数は七三九枚にも及ぶこと、また、被告が昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票記載の料金額に施した修正の方法及び修正後の料金額がいずれも相当であると認められること等を併せ考えると、右売上伝票に係る修正後の料金額を基礎として、右期間の課税比率を算定する推計方法自体には十分な合理性が認められるものというべきである。
ウ しかしながら、〔証拠略〕によると、<1> 被告は、第一次更正の際、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票中の後日新たに作成されたと判断されるもの五一枚(別表第一七の備考欄に「書換」と記載のあるもの)につき、その当時算出した課税比率五〇・〇八パーセントを用いて、当該伝票に係る売上額の五〇・〇八パーセントを課税売上額に、残額を非課税売上額に割り振って、右三か月分の課税売上額及び非課税売上額を算出し、これに基づいて更正をしたこと、<2>被告は、本件の右アの推計においても、右<1>の場合と同様、後日新たに作成されたと判断される売上伝票につき、その売上額の五〇・〇八パーセントを課税売上額に、残額を非課税売上額に割り振った上、これも計算に組み入れた上、その主張に係る課税比率〇・四九五を算定したこと、<3>しかし、第一次更正の際に算出した五〇・〇八パーセントの課税比率は違算に基づくものであること、以上の事実を認めることができる。
右事実によれば、右アの推計方法を採用する場合においても、後日新たに作成されたと判断される売上伝票につき、その売上額の五〇・〇八パーセントを課税売上額に、残額を非課税売上額に割り振ることについては、何らの合理性をも認め得ないことは明らかである。そして、昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票七三九枚中、後日新たに作成されたと判断されるものが五一枚にすぎないことに鑑みれば、課税比率の計算上は、これに係る売上額は課税売上額及び非課税売上額の双方から(したがって、総売上額から)除外することが相当であり、そうした場合、別表第一七のB欄記載のとおり、課税売上額の合計は三五八万五二七五円、非課税売上額の合計は三六七万〇七七一円であるから、その課税比率は〇・四九四となる(なお、後日新たに作成されたと判断される売上伝票に係る売上額に右課税比率を乗じた額を課税売上額に、残額を非課税売上額に割り振った上、これを計算に組み入れても結果は同一である。)。
(計算式)
<省略>
エ したがって、右期間の課税比率は〇・四九四とすべきである。
(2) 昭和五六年四月分ないし昭和五七年一二月分
ア 右期間は、免税点が二〇〇〇円であり、右(一)の(1)のとおり、Aが伝票制の料金形態を採用していた時期に当たるところ、被告は、右(一)の(2)の昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票に係る修正後の料金額に基づき、一人当たりの料金額が右免税点二〇〇〇円を超える場合の売上額の合計の総売上額に対する割合を〇・九二八と算定し、これを右期間の課税比率と推計するものである。
イ しかして、右期間の料金形態が昭和五八年八月ないし同年一〇月と同様伝票制であることのほか、同年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票が原告甲野から提出されたものであり、その枚数が七三九枚にも及ぶこと、同時に提出された同年五月分ないし同年七月分の売上伝票が信用できないものであること、被告が昭和五八年八月分ないし同年一〇月分の売上伝票記載の料金額に施した修正の方法及び修正後の料金額がいずれも相当であると認められることは、右(1)の場合と同様である。
なお、右期間と異なり、同年八月ないし同年一〇月は免税点が二五〇〇円である時期に当たるが、右1の(一)及び(三)の認定事実によれば、いずれも実額で認定した昭和五七年一月分ないし同年六月分の売上額と昭和五八年一月分ないし同年六月分売上額とを比較すると、免税点が二〇〇〇円の当時である前者の売上額よりも、免税点が二五〇〇円に引き上げられた後である後者の売上額の方が却って減少しているのであるから、Aに関しては、免税点の引上げに伴って、顧客の消費意欲が刺激され、入店一回当たりの売上額が増加したというような事実を窺うこともできない。
そうすると、昭和五八年八月ないし同年一〇月当時とは免税点が異なるとしても、昭和五六年四月分ないし昭和五七年一二月分の課税比率の算定に当たり、右アの推計方法によること自体に合理性がないということはできない。
ウ しかしながら、被告が、後日新たに作成されたと判断される売上伝票につき、その売上額の五〇・〇八パーセントを課税売上額に、残額を非課税売上額に割り振り、これも計算に組み入れた上、その主張に係る課税比率〇・九二八を算定したこと、このことについては合理性が認められず、課税比率の計算上は、後日新たに作成されたと判断される売上伝票に係る売上額は課税売上額及び非課税売上額の双方から除外することが相当であることは、右(1)のウで述べたと同様であり、そうした場合、別表第一七のC欄記載のとおり、課税売上額の合計は六六四万八四〇六円、非課税売上額の合計は六〇万七六四〇円であるから、その課税比率は〇・九一六となる。
(計算式)
<省略>
エ したがって、右期間の課税比率は〇・九一六とすべきである。
(3) 昭和六一年三月分ないし同年一二月分
ア 右期間は免税点が二五〇〇円であり、右(一)の(1)のとおり、Aが、入店の際男性三〇〇〇円、女性二五〇〇円の料金を徴収する入場料制の料金形態を採用していた時期に当たるところ、被告は、右(一)の(3)の本件強制調査の際に原告甲野方居宅内において差し押さえた合計六二一枚のA及びBの売上伝票のうち、Aに係る昭和六二年一月分の売上伝票と判明し、かつ、男女別顧客人員及び料金額の判読が可能であった八〇枚について集計した結果に基づき、さらにAにおいては割引券を配布して料金割引を実施している実情を考慮して、午後八時以前の入店客に係る売上を一律に非課税とする修正を加えた上で、課税売上額の合計の総売上額に対する割合を〇・四一七と算定し、これを右期間の課税比率と推計するものである。
イ 本件強制調査の際に差し押さえた売上伝票についての、被告の店舗別分類及び売上年月日、料金額及び顧客数の認定、集計がいずれも相当であることは、右(一)の(3)のとおりである。しかして、被告が課税比率算定の基礎となる資料として用いた売上事例は昭和六二年一月分の売上に係る八〇例にすぎないところ、一般に、料飲税の課税標準額(月ごとの課税売上額)を推計により算出するに当たり、課税庁において把握し得た課税場所における課税期間中の利用行為に係る総売上額に、当該課税場所に係る課税期間の前後の一定期間の売上事例に基づく課税比率を乗じて、課税期間の課税標準額を算出する本人比率法を採用する場合においては、その推計の基礎となる売上事例は、個々的な売上等に係る特殊性を解消するために、相当程度の期間における相当数の事例であることが望ましいとはいえるが、課税庁が把握し得た売上事例が右の程度の期間、数に達しているとはいえない場合であっても、その把握し得た売上事例が、季節的な特殊性の比較的希薄な期間に属するものであって、かつ、その売上事例の選択抽出に恣意が介在する余地のないような場合であれば、その把握し得た売上事例に基づく課税比率を採用することもやむを得ないものというべきであり、そのようにしたからといって、直ちにその推計が合理性を有さないということはできない。
しかるところ、被告が本件強制調査の際に差し押さえた売上伝票のうち、Aに係るものであって、年月日、男女別顧客人員及び料金額の判読が可能であったのが、被告主張の昭和六二年一月分の売上に係る八〇枚にすぎないことは、右(一)の(3)(別表第一八)のとおりであり、これに係る売上事例のほか、昭和六一年三月分ないし同年一二月分の課税比率算定の基礎とし得るような売上事例を把握し、あるいは把握し得るような状況は認められない。また、年間のうち一月は、Aのようなディスコティックにとっては、いわゆる正月三が日の繁忙期を過ぎれば、逆に閑散期に入り、月全体としてはその売上額等に顕著は増加ないし減少が見られないという点で、季節的特殊性の比較的希薄な月であるものと考えられる(このことは、右1で認定した昭和五七年ないし昭和六〇年の月別売上額において、いずれも一月が年間平均額を多少上回る程度の額であることからも裏付けられる。)。さらに、被告が推計の基礎として採用した売上事例八〇例は、本件強制調査の際に被告が原告甲野方居宅において差し押さえた洗濯機で攪拌された状態の売上伝票の判読可能部分に基づいて集計した結果、Aに係るもので、年月日、男女別顧客人員及び料金額が判明したものの全部であって、結果的にはAの全売上事例から無作為にこれを抽出したと同様の関係にあり、恣意が介在する余地のないことはもとより、十分な統計的信頼性を有するものというべきである。
したがって、右アの推計方法に合理性がないということはできない。
ウ しかして、別表第一八から、Aに係る昭和六二年一月分の売上伝票と判明し、かつ、男女別顧客人員及び料金額の判読が可能であったもの八〇枚に係る売上年月日、料金額及び顧客数等の認定、集計の結果を抽出すると別表第一九記載のとおりであり、これに係る売上事例八〇例に基づいて、まず、午後八時以前の入店客に係る売上を一律に非課税とし、さらに、その余の売上につき、売上額と男女別の顧客数とに応じて、非課税売上と課税売上とに区分した結果は同表の非課税売上欄及び課税売上欄記載のとおりであって、総売上額は七五万二五〇〇円、課税売上額は三一万一五〇〇円となるので、右課税売上額三一万一五〇〇円を総売上額七五万二五〇〇円で除して得た〇・四一四が課税比率となる。
なお、被告は、課税売上額が三一万四〇〇〇円、課税比率が〇・四一七である旨主張するところ、被告が集計した乙第二七号証(一二丁及び一三丁)の表は右被告主張に沿うものであるが(但し、右集計は午後八時以前の入店客に係る売上を非課税として計算する前のものである。)、通し番号(被告の右集計表の「CNO」欄、別表第一九の「CN」欄)一三三番の伝票に係る売上事例(昭和六二年一月二〇日、男性客三名、女性客一名、料金額一万〇五〇〇円)については、その料金額一万〇五〇〇円が、男性客の料金を三〇〇〇円、女性客の料金を二五〇〇円とした場合の料金額一万一五〇〇円よりも低額なのであるから、被告の集計のようにその料金額一万〇五〇〇円全部を課税売上に区分するのは相当ではなく、女性客一名の料金額を二五〇〇円、男性客三名の料金額を八〇〇〇円(一人当たり二六六六円)として前者は非課税売上に区分するのが相当であり、そのようにすると、別表第一九記載のとおりとなる。
エ したがって、右期間の課税比率は〇・四一四とすべきである。
(4) 昭和五九年三月分ないし昭和六一年二月分
右期間の免税点は二五〇〇円であるが、Aの料金形態が確認し得ない時期であるところ、被告は、右(1)ないし(3)の各期間の課税比率のうち、最も低率となる課税比率をもって右昭和五九年三月分ないし昭和六一年二月分の課税比率と推計するものであり、他に推計の資料となるべきものが見当たらない以上、料飲税の特別徴収義務者である原告らの利益に従って、そのような推計をすることもやむを得ないものといわざるを得ない。
したがって、右期間の課税比率は、右(3)の課税比率と同様〇・四一四とすべきである。
(三)(1)ア 原告らは、Aは昭和五九年一月頃から、その料金形態を入場料制としており、他方で様々な割引券を配布し、割引券による値引を経て、結局、ほとんどの場合、顧客の支払う利用料金は料飲税の免税点以下となるようにしていたとか、男性客の入店を制限して、料金設定が低額である女性客が顧客全体の概ね七割となるようにして営業を行っていたとかして、そのようなAの特殊事情を斟酌していない被告の課税比率の推計は不合理であり、課税比率がその主張のように高率となることはないと主張する。
イ しかして、まず、Aは昭和五九年一月頃からその料金形態を入場料制としていたとの点については、〔証拠略〕中にこれに沿う供述部分があるが信用することができず、Aは昭和五九年二月までは伝票制の、昭和六一年三月以降は入場料制の料金形態であったと認められるものの、昭和五九年三月から昭和六一年二月までの料金形態は不明とせざるを得ないことは右(一)の(1)のとおりである。
もっとも、右(二)の(4)のとおり、料金形態が不明である昭和五九年三月分ないし昭和六一年二月分についても、その課税比率は、結局、入場料制を採用していた時期である昭和六一年三月分ないし同年一二月分について算定した課税比率を用いているのであるから、料金形態を理由とする原告らの非難はいずれにせよ失当である。
ウ また、割引券については、〔証拠略〕によれば、Aの料金形態が入場料制となった後の一定時期以降、原告らがAの割引券を配布していた事実が認められるが、その配布に係る時期、数量や配布の範囲についてはこれを明らかにする的確な証拠がなく、さらに、右各証拠によれば、配布に係る割引券は特に顧客の多い休日の前日には使用し得ないものであることも認められるのであるから、原告が割引券を配布した事実があるからといって、これによる値引きを経てほとんどの場合にAの顧客の支払う利用料金が料飲税の免税点以下となった旨の原告ら主張事実を認めるには至らない。
のみならず、右(二)の(3)の課税比率の推計(この推計による課税比率が、入場料制を採用していた昭和六一年三月分ないし同年一二月分だけでなく、料金形態が不明である昭和五九年三月分ないし昭和六一年二月分についても採用されていることは右(二)の(4)のとおりである。)の基礎とされたAに係る昭和六二年一月分の売上伝票八〇枚に係る売上事例が、結果的にAの全売上事例から無作為に抽出したと同様の関係にあり、十分な統計的信頼性を有するものというべきことは叙上のとおりであるところ、その売上事例に係る料金額のうちには、割引券の使用による値引きを経た後のものも含まれているはずである(現に別表第一九の売上事例中には、料金額と男女別の顧客数との対比からみて、割引を経たことが窺われるものが存在する。)のみならず、右の推計に当たっては、その上さらにAにおいて割引券を配布して料金割引を実施している実情を考慮して、午後八時以前の入店客に係る売上を一律に非課税とする修正を加えているのであるから、右推計のうちには、割引券使用による値引きの事実も既に解消されているものというべきである。
エ さらに、右(一)の(3)(別表第一八)の認定事実によれば、Aに係る昭和六二年一月分の売上伝票と判明し、かつ、男女別顧客数及び料金額の判読が可能であったもの八〇枚に係る売上事例における男女別顧客数は、男性一〇五名、女性一八二名(その合計に対する女性客の比率は六三・四パーセント)であることが認められ、この事実によれば、Aにおいては、女性客の顧客全体に対する割合は七割近くあったことが推認されるものの、右(二)の(3)の課税比率の推計は右売上事例を基礎とするものであり、かつ、その売上額と男女別の顧客数とに応じて非課税売上と課税売上とを区分するものであるから、その推計のうちには顧客の男女比率も解消されていることが明らかであり、したがって、原告らの右アの主張のうち、顧客の男女比率をいう部分も理由がない。
オ そうすると、原告らの右アの主張は全体として失当である。
(2) 原告らは、また、原告甲野が被告に対してしたAの昭和六二年一月分以降の料飲税の納入申告に係る課税比率が、約二六パーセントないし約二九パーセントであるとして、課税比率が被告の推計におけるように高率となることはない旨主張するが、右納入申告に係る数値が措信できないことは右1の(二)で述べたと同様であるから、右主張も採用し得ない。
3 そこで、右2の(二)の(1)ないし(4)の区分に従い、右1で認定した係争各月のAの売上額に当該月分に係る課税比率を乗じて係争各月分の課税標準額を算出すると、別表第二〇記載のとおりとなる。
三 本件課税処分の適否
1 本件更正等
(一) 右二の3(別表第二〇)の課税標準額に基づいて係争各月の料飲税の税額を算出すると別表第二一の税額欄記載のとおりとなる。
(二) 本件更正等のうち、昭和五七年七月分、昭和五八年七月分、昭和五九年一月分、同年二月分、同年七月分、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分、昭和六一年七月分の更正又は料飲税の決定に係る税額は、いずれも右(一)の税額の範囲内であるから、右各月分の更正又は料飲税の決定はいずれも適法である。
(三) 本件更正等のうち、昭和五六年四月分ないし昭和五七年六月分、同年八月分ないし昭和五八年六月分、同年八月分ないし同年一二月分、昭和五九年三月分ないし同年六月分、同年八月分ないし同年一二月分、昭和六一年一月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一一月分及び同年一二月分の更正又は料飲税の決定に係る税額は、いずれも右(一)税額を超えることとなるから、右各月分の更正又は料飲税の決定は、それぞれ、右(一)の税額の範囲で適法であり、これを超える部分の範囲は違法である。
2 本件重加算金徴収決定
(一) 右第二の一の3の(四)の事実に、〔証拠略〕を総合すると、原告甲野は、自ら若しくは家人に指示して、係争各月のAに係る売上伝票、帳簿その他料飲税の課税標準額の算出の基礎となる書類を、本件強制調査の際に洗濯機に投入して攪拌し、焼却炉で焼却し、あるいは原告方の隣家との塀際及び屋外換気装置内に隠匿したほか、原告らは本件強制調査に至るまでの間にも、右書類を随時廃棄処分するなどしてきたことが認められるところ、右各行為は、料飲税の課税標準額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいする行為に該当するものというべきである。
(二) そこで、係争各月のうち、申告納入期限経過後に料飲税の納入申告があった昭和五八年一一月及び同年一二月分については、右第二の一の2の(三)の各更正(但し、右1の(三)、(一)の適法である範囲)に伴う料飲税の増差税額を基礎とし、料飲税の納入申告のなかった昭和五九年一月分ないし昭和六一年八月分、同年一一月分及び同年一二月分については、右第二の一の2の(三)の各料飲税の決定に係る税額(但し、昭和五九年三月分ないし同年六月分、同年八月分ないし同年一二月分、昭和六一年一月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一一月分及び同年一二月分については、各料飲税の決定に係る税額のうち右1の(三)、(一)の適法である範囲の税額)を基礎として、それぞれ重加算金の額を算出すると、別表第二一の重加算金欄記載のとおりとなる。
(三) 本件重加算金徴収決定のうち、昭和五九年一月分ないし同年三月分、同年七月分、同年九月分、同年一一月分、昭和六〇年一月分ないし同年一二月分、昭和六一年七月分に係る重加算金額は、いずれも右(二)の重加算金額と同一であるから、右各月分の重加算金徴収決定はいずれも適法である。
(四) 本件重加算金徴収決定のうち、昭和五八年一一月分、同年一二月分、昭和五九年四月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一〇月分、同年一二月分、昭和六一年一月分ないし同年六月分、同年八月分、同年一一月分及び同年一二月分に係る重加算金額は、いずれも右(二)の重加算金額を超えることとなるから、それぞれ、右(二)の重加算金額の範囲で適法であり、これを超える部分の範囲は違法である。
(裁判長裁判官 荒川〓 裁判官 石原直樹 森崎英二)
(別表第八の一)
昭和56年ないし昭和58年分売上額の季節変動傾向
<省略>
(別表第八の二)
昭和57年7月分ないし同年12月分売上額算出表
<省略>
<省略>
(別表第一〇の二)
昭和59年1月分ないし同年12月分売上額計算表
<省略>
<省略>
(別表第一二)
昭和61年1月分ないし同年3月分売上額算出表
<省略>
(別表第一三の一)
昭和60年・昭和61年おしぼり販売量比較表
<省略>
(別表第一三の二)
昭和61年4月分ないし同年7月分合計売上額算出表
<省略>
<省略>
(別表第一三の三)
昭和61年4月分ないし同年7月分売上額算出表
<省略>
<省略>
(別表第一三の四)
昭和61年8月分売上額算出表
<省略>
<省略>
<省略>
(別表第一五)
昭和55年、昭和56年、昭和61年各12月の売上日額の変動傾向
<省略>